《フィリップ・パカレ》
自然派ワインの代名詞とも言われるフィリップ・パカレ。
繊細なピノ・ノワールにテロワールの特徴を密に反映させ、造り出される純度の高い味わいは、
自然派の枠に捉われず、多くのブルゴーニュワインラヴァーを魅了しています。
現当主であるフィリップ・パカレ氏は、代々続くボジョレーのブドウ栽培・醸造一家で育ち、
パカレ氏にとって「ワインの世界に生きる」ということは当然のことでした。
ディジョン大学にて醸造学を学んでいた時に、醸造家であり醸造科学者でもある
ジュール・ショヴェ氏と知り合い、この出会いこそが、その後のパカレ氏のワイン造りに
大きく影響を与えることになります。
ビオディナミ農法の先駆者であり、「自然派の神」と呼ばれたジュール・ショヴェ氏のもと、
パカレ氏は大学で「自然栽培と酵母」と「土壌と酵母」について研究を深め、
卒業後ビオロジック農法団体「ナチュール・プログレ」で2年間従事。
その後、ワイン造りを極めるためにローヌ地方シャトーヌフ・デュ・パフの第一人者
「ドメーヌ・シャトー・ラヤス」、そしてブルゴーニュの名門ドメーヌ「ルロワ」で
修業を積んだ後、D.R.C.の社長が共同経営を務める「ドメーヌ・プリューレ・ロック」の
醸造及び販売責任者を務めました。
パカレ氏が責任者を務めた10年の間でプリューレ・ロックのワインの評価はみるみるうちに高まり、
それと共にパカレ氏の名も世界に広く知られるようになったのです。
その後パカレ氏の手腕が認められ、D.R.C.の醸造長にとのオファーがあったにも関わらず、
その名声をあっさりと辞退。
自らの理想とするワイン造りを目指し独立し、2001年からフィリップ・パカレとしてワインを発表しました。
リリースするやいなや、華やかな経歴と確かな腕を持つパカレ氏のワインは、ワイン界の話題を独占。
瞬く間に自然派ワインの代表格としてその名を馳せたのです。
近年は、「ル・ギッド・デ・メイユール・ヴァン・ド・フランス2013」など伝統あるワインガイドでも
他の著名な造り手と共に名前が挙げられるようになりました。
今や自然派ワインの代表格というだけではなく、ブルゴーニュの入手困難な造り手の一人として人気を集めています。
自社畑をほとんど持たないフィリップ・パカレは、パカレ氏が独立前から選んできた無農薬・低収量を徹底する
栽培農家からブドウを購入しワイン造りを行っています。
2007年には、より丁寧な畑仕事をするために、 畑仕事のプロフェッショナルが集まったブドウ栽培会社を自社で設立。
畑の台木選びから醸造にわたる全ての過程において自らチームの監督として畑に出向き指示を出します。
また収穫時にも収穫専門のチームを作り、厳しい選果の基準を徹底しています。
こうした各過程ごとの専門チームを作ることで、パカレ氏が理想とする「果梗まで熟した良質なブドウ」が造られるのです。
パカレ氏がワイン造りにおいて最も重視しているのが、畑に生息する野生酵母の働きです。
その畑だけが持つテロワールの個性ともいえる、土壌のミネラル分をしっかりとワインで表現するためには、
この野生酵母の働きが不可欠と考えています。
「除草剤や除虫剤を使えば畑での仕事は楽になる。でもブドウ樹を栄養過多にして病気への抵抗力を落としてしまう。
同時に、何より大切な畑の酵母を死滅させてしまうことに繋がる。」という考えのもと化学薬品の使用は一切行いません。
この酵母の働きを重視したワイン造りは、醸造においても顕著に表れています。
重力システムが採用されている醸造においてはブドウは除梗されず、SO2(亜硫酸塩)を使用しない代わりに
炭酸ガスを注入して酸化を防ぎながらブドウ由来の自然酵母による発酵を待ちます。
パカレ氏はワインもチーズや味噌の発酵食品と同様、アルコール飲料というより発酵飲料と捉え、
酵母の自然な働きを促すために発酵中の温度管理は行いません。
各区画に存在する酵母は約30種類と言われ、それぞれが異なるテロワールの風味を引き出すと言われています。
個々の酵母が働く時期は発酵の段階により異なるため、人為的に温度コントロールすると、一部の酵母しか働かず、
単純な味わいのワインになってしまうとパカレ氏は考えているのです。
新樽の使用については、ワインに過剰な樽香がつくことを避けるために使用を抑え、
1、2年使用された樽をメインに使っています。
熟成中は澱引きはもちろん、清澄、濾過も行いません。
野生酵母の働きを阻害するSO2は、醸造中には一切使用せず、瓶詰め前に必要最低量のみ添加。
そして、ブルゴーニュ・ルージュからグラン・クリュまで全て手作業で瓶詰しています。
*輸入もとの資料より